WhiteDeath

 何……騒がし……
 意識の切れ端を必死で探して掴んだ。行き着く場所も構わない。必死にもがいた。
 耳にまとわりつく音がうるさい。ゆっくり目を開けてみた。ただ白いだけで何も無い。
 けれど真っ白の画面がだんだんと色を取り戻していく。
 ……え?
 色の戻った視界に映ったものを認識したとたん、今度こそ意識を手放した。

 花火の音。
 わたし、あなたのことがすき。
 でも、あなたはわたしをみてないのね。
 花火のオト。
 べつにいいの。
 わたしがかってにすきなだけ。
 華火の音。
 いいえ、あなたはわたしじゃないだれかをみてるの。
 花火ノ音。
 わかってるわ。
 花灯の音。
 いいの。
 花火の音。
 さよなら。
 華灯ノオト。
 ハナビノオト。
 沈黙。

 花火は終わった。
 こうして終わった。
 人の心なんて関係なく、終わるものはいつだって終わる。
 空の沈黙と、雑踏と、相手のいなくなった沈黙が訪れた。
 彼女の消えた空間に、虚しいほどの穴が空いた。
 今なら追いかければ間に合う。
 でも。
 躊躇う。今追いかけて言われたことを否定しても、それを否定されることが目に見えている。
 何も見えなくなって、諦めて、知らん顔すればいい。
 そう言い聞かせて、反対方向に歩みを進めた。
 それから数日後、電話が鳴った。
 駆けつけて、彼女を抱き起こそうとして目に映ったものは赤い紅いあかい液体。
 見慣れたまぶしい白い肌には、幾筋もの傷。
 息の薄い彼女の口から、不意に言葉が漏れた。
「やっと……逢えた…」
 今まで見たことも無い幸せそうな彼女の笑みは、僕を見ていたわけではなかった。
 そのとき、解った。
 あの花火の降りしきる中で彼女が言いたかったこと。
 身代わり。
 その代償。
 罰。
 罪。
 僕の背中を汗が流れ落ちていく。
 呼吸すらままならず、息苦しくてどうしようもない。
 頬を伝う彼女の涙は、僕に感染した。

 彼女は消えてしまった。
 ならば、僕も消えよう。
 守るべきものは、もう無い。
 しろいしろい、まっしろな世界にいこう。
 彼女が、今度こそ待っている。
 僕を。
 だからこの世界に未練なんて無い。

あとがき
 ついに…やってしまいました。こんな短編で2人も!
 これはボーっとしてたときにほけーっと書いたものにすっこーし修正を加えただけ。
 ぼーとしてるとダークなことしか考えないのね、って? いえいえ、そんなことありませんよ。……多分。
 うぅ、ほのぼのとしたものを書きたいのに…(泣)
 こうなってくると、もう諦めも入るね、ウン。 
 こんな感じですが次回作も読んで下さいなw

BACK