優しさの雫

「馬鹿みたい…」
 私は一人でそうつぶやいて、それから泣いた。子供のように、声を上げて泣いた。
 いくら泣いても涙は止まらなかった。
 自分の無力さを思い知らされて、ただ泣くことしか出来なくて、そんな自分に腹が立って。そんな悪循環しかなかった。

 あの人にとっては私の存在価値なんて皆無だと、そう思ってた。
 私はあの人に何もしてあげられないと、そう思ってた。
 そう思うことで、自分の気持ちを抑えてた。
 そうじゃなきゃ、頼り切ってしまうから。
 頼ってはいけないと、思ってたから。
 頼れないわけじゃなかった。実際、頼ってた部分もいくらかあったと思う。
 それでも、頼ることを控えてた。
 頼ってたものを失ったとき、立って居られなくなることが怖かった。
 けれど、失ったにも関わらず今の私は動くことが出来ない。
 何も出来ずに、泣くだけ。
 結局頼ってしまって居たんだと思い知らせれてショックだった。
 もう戻らない、何でもなく、何も無かった日々を、不意に思い出した。
 どの日も、どんな時も、あの人の優しさは私に向けられていたのだと、その時になって解った。でもそれは、今更な話。
 失ってから気付く人間にはなりたくないと思ってた。なのに、気付けなかった。
 今となってはもう、後悔しかなくて、あの人に謝りたくて、けれどどう謝っても無意味な気がしてならなかった。
 頼らないように、頼らないようにと思えば思うほど、あの人の言葉が痛くて、素直に聞けなかった。  少しでも素直に「うん、そうだね」と言えていたら、もしかしたら、今こんな状況じゃなかったかもしれない。
 まだあの人の隣に居られたかもしれない。
 私の涙は頬を伝い、床に落ちていった。

 ふと、あの人の声が聞きたくなり、電話をかけたのはそれから1ヵ月後。
 呼び出しの音の後、聞きなれた声を聞いてどきりとした。
 特に用は無いんだけど、と前置きを入れて話を始めた。
 気づくと、話の最中にいつからか気持ちが冷えてきていた。
 私は電話口で、あの人に言った。ありがとう、と。
 そして、電話を切った。
 もう終わったんだと、その時ようやく冷静に受け止めた。
 窓を開け、冷え切った空気に身をさらして、強く願った。

 あの人に、いつか、本当の幸せが訪れますように。

あとがき
超久しぶりのNOVEL更新!
いかがでしたか?
わけわかんねーよ、てのは受け付けません。(問答無用でシャットアウトです♪)
しっかしまぁ、これ書くのにかなり時間かかってたりするんですよねぇ。こんなに短いのに(笑)
なんせ、書き始めたのは去年の12月! およそ半年? 時間かかりすぎ?(汗)
うう…い、色々あったのよぅ(泣)
てことで、次回作はいつになるか判らないけれど、待っててくれたら幸いです♪
ここまで読んでくださってありがとうございました!

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