カナシキカゼ

 家の外で、風が暴れている。家の雨戸や壁を壊さんとばかりに。
 少女は家の中、自分に割り当てられた部屋の床に座り込み、声も出さずに涙だけを流していた。ひどく冷えきった、少女ひとりで使うには少し広い部屋。暖房器具があるにもかかわらず、少女は一切つけようとしない。つけるどころではない。窓は開け放たれ、暴れている風を自ら招き入れている。
 少女は無言のまま、嗚咽すらせずに涙を流し続けた。身体は寒さのあまりがたがた震え、立てるかさえ判らなかった。もっとも、少女は立ち上がる気力すらなかったが。
 不意にドアがノックされ、少女と面影の似た女が入ってきた。女は無言のまま、ベッドのサイドテーブルに暖かい食事の乗ったトレイを静かに置き、窓に近付いた。少女はそれまで自分の意志ではぴくりとも動かなかったが、女が窓を閉めようと手を掛けたとき、叫んだ。
「閉めないで!」
 凛とした高い声は、しかし風の音によって小さく女の耳へ届いた。女はそれには従わず、窓を閉めた。
「さあ、あたたかいうちに食べなさい」
 ゆったりとした足取りで少女に近付き、微笑みながらそう言った。少女は無言でうつむき、嗚咽した。女はベッドから毛布をとり、少女にかけた。毛布を肩からやさしくかけられ、少女の中で一旦閉じたはずの記憶の蓋が再び外れた。
 とたんに少女は床に突っ伏して声を上げて泣いた。
「どうして私じゃなかったの!? お父様は何も悪くないのに! どうして、どうして、私が悪いのに!」
 女は無言のまま、少女を抱き締めた。
「そうね、あなたのお父様は悪くないわ。そしてあなたも、悪くない」
 少女は抱き締められた温かさや、その言葉に全身を預けた。
 少女が泣き疲れて眠りに落ちると、女は少女をベッドへ運び、ふかふかの布団をかけて、部屋を出た。
「悪いのは、私よ」
 ドアを閉め、そうつぶやく女の目にも涙が溢れ、頬を伝い落ちた。
 私が貴方に惹かれたから……。
 女は涙を流しながら、その場を離れた。

 風はまだ、暴れ狂っていた。少女と、女の心の中を……。

あとがき
ショートショートを作りたい衝動に負けました。(汗)
設定とかは何もないです。ほんとに文字を並べただけ、って感じ。(そんなんでいいのかよ)
感想など頂ければ幸いです♪一応苦情や誤字脱字なども…(爆)いや、誤字脱字のチェックはしましたよ。しましたが…ねぇ?(なに)
では、此処まで読んで頂いて有難う御座いました。
次回作品をお楽しみに〜(するかっ!)
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